國本建築堂では設計デザインや施工工事以外に不動産業も生業としていますが、数年に一度本当に素晴らしい建物に出会います。
その度になるべく現状を維持していただける方に受け継がれることを願い売買や改修工事のお手伝いをさせていただいています。
この夏私たちが出会った建物は、足を踏み入れた瞬間一気に時代を遡り、タイムスリップしたような感覚に陥る建物でした。
そこだけ時間が止まっているようでした。
周囲の変化に流されることなく、ただそこに何十年も変わらず佇む。
気のせいでしょうか、空気の匂いもどこか懐かしく感じました。
(かび臭いとかではなく)
とても丁寧に管理されていたようで、空き家となって20年以上経っているにも関わらずあまりひどい傷みもない。
現状の建物図面を起こすために測りましたが、さほど大きな狂いもない。
腕の良い大工さんの仕事ぶりが伝わり、それは鳥肌の立つような感覚でした。
そしてふと思いました。
今これと同じ建物を新たに建てようと思うと一体どのくらいの時間とお金がかかるのだろう。
果たして建てられるのか…
所有者の方に譲り受けた当時の事、この建物との思い出、手放すに至った経緯をお伺いしました。
「私たちと同じようにこの建物をかわいがってくれる方にお譲りしたいんです。」
この言葉が耳から離れませんでした。
同じように、
同じようにこの建物を維持していくために購入される方なんて現れるのだろうか?
随分時間をかけゆっくりと探さないと難しいのでは?
もしくは引き取ってもらえるのかは別として、市に寄贈するなどの手段を取らなければ…
我々の頭にはよく雑誌などで見かける、スタイリッシュなリノベーションがなされるイメージが付きまといました。
数日悩みました。
いろいろな葛藤はありましたが、どうしても「我々がしなければ」という思いが消えず、最終的に譲り受ける決断をしました。
所有者の方が、変わらない姿で何十年も大切に守られてきたこの建物を…
まずは傷んでいる箇所を直したり、簡易なリフォームがされている部分を当時の姿に再建することをひとつの目標としています。
活用法についてはまだまだ検討の必要なことがありますが、いつか素敵な形で皆様にお披露目できればと思っています。
随分時間がかかりそうですが、またブログなどでお話しできたらと思います。